接着剤なしでバナナを支えた!歯ブラシ2本が生む「摩擦力」の魔法
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
歯ブラシが、まさか「力持ち」に変身するなんて想像できますか? 普段は歯の汚れを落とすだけの道具が、科学の力で驚きのパワーを発揮する実験をご紹介します。身近なもので物理の面白さを体感できる、とっておきのネタですよ。
実験:歯ブラシVSバナナ!勝つのはどっち?
用意するのは、ブラシが固めのハブラシを2本です。
GUM(ガム) デンタル 歯ブラシ#191 [3列超コンパクトヘッド かため
でやってみいました。なお柔らかめの歯ブラシだとうまくいかなかったです。
実験の手順はとてもシンプルですが、結果は衝撃的です。
1本目の歯ブラシを、S字フックなどを使って高いところからぶら下げます。
ぶら下げた歯ブラシのブラシ部分に、もう1本の歯ブラシのブラシ部分を向かい合わせにして、グッと噛み合わせます。

指でこの噛み合わせた部分を軽く押さえながら、下の歯ブラシにおもりをつけていきます。
今回はなんと、「バナナを一房」(500g以上)ぶら下げてみました。かなりの重さがありますよね。「さすがに落ちるだろう」と思って指を離すと……。
驚きの結果:支えられるんです!
なんと、下の歯ブラシは滑り落ちることなく、ガッチリとバナナを支えているではありませんか! 接着剤もテープも使っていません。ただ、ブラシの毛と毛を噛み合わせただけです。

科学の解説:チリも積もれば山となる「摩擦力」
なぜ、こんなことが起きるのでしょうか?秘密は「摩擦力(まさつりょく)」にあります。
歯ブラシの毛、一本一本はとても細くて弱い力しか持っていません。しかし、歯ブラシには何百本もの毛が植えられています。 2本の歯ブラシを噛み合わせると、それぞれの毛がお互いに触れ合い、わずかに曲がって元に戻ろうとする力で押し合います。これによって、毛と毛の間に摩擦力が生まれるのです。
「1本あたりの小さな摩擦力 × 数百本の毛」
この足し算が、バナナ一房をも支える巨大な摩擦力を生み出したというわけです。
あの有名な「電話帳実験」と同じ原理
この現象を聞いて、テレビや科学ショーで有名な実験を思い出した方もいるかもしれません。
そう、「2冊の電話帳のページを交互に重ね合わせると、大人が引っ張っても取れない」という実験です。あれも、紙1枚1枚の摩擦力は小さくても、何百ページ分も重なることで、車を牽引できるほどの凄まじい力になるというものです。
今回の歯ブラシの実験は、まさにその「ミニチュア版」と言えますね。電話帳よりも手軽に、しかも100円ショップで買える道具だけで、この驚きの物理法則を体験できるのが面白いところです。
まとめ:身近に隠れたすごい力
私たちは普段、摩擦力の恩恵をあまり意識しませんが、実はスニーカーが滑らないのも、マジックテープ(面ファスナー)がくっつくのも、この摩擦や引っ掛かりの力を利用しています。 特にマジックテープは、植物の種が動物の毛にくっつく様子から発明されましたが、今回の歯ブラシ実験もそれに近い「構造的な摩擦」を感じることができます。
まさか歯ブラシでこんな実験ができるとは、私も知りませんでした。 ぜひ、ご家庭や教室で試してみてください。理科の教科書を読むよりも、ずっとワクワクする発見があるはずです。
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